このシングル"Complete Control"は、タイトルからも分かる通り、その前のシングル"Remote Control"ととても関係が深い。ということを説明する為には、まず、この"Complete Control"の歌詞の最初の二行を紹介するのが一番手っ取り早い。

"レーベルの奴等は、"Remote Control"をリリースしろと言った / でも俺達は、あいつらの所からは出したくなかった"

そう、社会的な抑圧をテーマにした"Remote Control"という曲を書いたクラッシュ自身も、レコード会社との契約というしがらみを受けていたのだ。クラッシュは、セカンド・シングルにこの曲がリリースされることに強い不満を持ち、実際不買運動まで起こしたとか。その上で、次に発売するシングルのタイトルと歌いだしがこれ。何ともクラッシュらしい。まぁ逆に、自分達への反抗的な態度をも宣伝材料にしたレコード会社の面の皮の厚さにも、ある意味感心するけど。

そんなまぁ怒りやしがらみは別としても、"Remote Control"も"Complete Control"も、どちらもエネルギー溢れる、初期クラッシュらしいアグレッシヴなナンバー。ボックスセットでのライナーで、この曲への思いを語っているのはミュージシャンではなく、フットボーラー。"イングランド史上最高のレフトバック"と称され、現在イングランドU-21代表の監督も務める、スチュワート"サイコ"ピアースその人である。

「あん時俺は14歳で、ロンドンのノース・ウエストにあるキングスバリーってとこで、親父とお袋と3人暮らしだった。学校が終わって家に帰ると、ベッドルームまで一直線、レコードをかけるって日々さ。部屋の壁には大好きなバンドのポスターを貼りまくってた。クラッシュだろ、ストラングラース、スティッフ・リトル・フィンガースに、ボウイ。。。彼等を通じて音楽に、そしてパンクにのめり込んでいったんだ。ラスカーズのセットリストや、ピストルズの、あの""ホリデイ・イン・ザ・サン"のポスターも持ってたね。地元のレコ屋にさ、デカい告知板があったんだよ。そこに貼ってあって。店員に"それ、剥がす時は俺にとっておいてくれよ"って頼み込んだのさ」

この話だけ聞いていると、とてもワールドカップや欧州選手権で、サッカーの母国をベスト4に導いた名選手とは思えない。只の、ロック好きの中2じゃないか。サイコの14歳炸裂トークは、きりもみしながら更に続く。

「あん時、何がしたかったかなんて俺にはちっとも分かってなかった。ま、今もだけどさ。あの頃は、ただただ音楽にハマっていた。スローな曲や、バラッドなんて聴きたくなかった。速くて、ラウドなものが欲しかった-ベッドの上でシンガロングしながら、馬鹿みたいに野球のバットをぶん回しながら、飛び跳ねられるやつをね。」

。。。何でこの人、サッカーなんてやってたんだ。

「"Complete Control"は、俺にとって一番生々しい、イカした曲だね。俺が欲していた全てが、特に、ヒリヒリした感じが、この曲にはある。未だに覚えてるよ。俺がこの曲を聴いてて、彼女が部屋に入って来るなり、俺に"音、小さくして!"って言って来たことをさ。」

"rawness" そう、ヒリヒリ、ザラザラ。生の感覚。初期のクラッシュを形容するのに、これ程ジャストなフレーズは無いかもしれない。14歳のスチュワート少年が感じたその感覚は、15歳の時の僕も同じように感じたし、今のスチュワートコーチが、試合前のロッカールームで、ヤング・ライオンズ達に、この曲を聴かせてたりしたら、カッコいいな。

■the clash / Complete Control



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