「小さいころから、クラッシュの存在は認識してた。俺の幼少期の、名も無きサウンド・トラックの一部だね。親父とお袋が、パンクのコンピレーションテープを持っていて、よく家でかけてた。"Should I Stay Or Should I Go"や、"London Calling"が入ってたかな。(コンピに入っていた)他のバンドが誰だったかは全く知らなかったけど、クラッシュだけはわかったんだ」

21世紀のロンドンに、77年のパンク・ロックの勢いと熱を取り戻した張本人、ザ・リバティーンズの一人、カール・バラーはそう回想する。

そうそう、忘れてはいけない。リバティーンズの2枚のアルバムをプロデュースしたのは、クラッシュのギタリスト、ミック・ジョーンズだった。エリザベス女王の即位50周年式典の最中にゲリラ・ライヴを行うなど、ピストルズ的な話題性を振りまいていたリバティーンズだけれども、サウンド的にはクラッシュの王道、シャープなロックンロールが基調だもんな。演奏ぐちゃぐちゃだけど。意外にもと言ったら失礼かもしれないが、カールは、クラッシュの歌詞の政治性、社会性の高さにも言及している。

「俺がさらに音楽にのめりこんでいってから、彼らが、パンク・イコンになっていく過程を知ったよ。でもクラッシュは常に、ピストルズよりも訴えかけてくるものがあった。彼らはより知的で、言うべきことを持っていた。”トミー・ガン”は、あの時代の空気を呼び起こしてくれる。Baader MeinhoffやThe Red Brigadeのような、テロ機関に関係した、70年代後半の不安定な空気の中で作り出された曲だ。。。この曲は、言ってみりゃぁビートルズ”revolution”のパンク的解釈だよ。-それに、始まりのスネア・ドラムも、クソ最高だね」

そう、イントロの、トッパー・ヒートンによるスネア・ロールは、機関銃の音のメタファーと言われている。クラッシュを聞くと、普段軽々しく「攻撃的なサウンド」とか「メッセージ性のある音」なんて言葉を簡単に使ってしまうことに、深く反省させられる。音だけ聴くと単純に体が踊りだしてしまう程、ロックンロールとしての快楽性、機能性がずば抜けて高い上に、ドラムの音自体に、曲の重要なテーマが込められている。『ロックンロールは、悩みを解決させない。悩んだまま踊らせるのだ』ーそんなピート・タウンゼントの言葉を、僕はクラッシュの歌詞を読み返す度に思う。

「俺は、クラッシュがやったことは、後にレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがやったことと同じだと思うんだ。聴く人間に、今世界で何が起こっているかを知らせるっていう。アウトローの立場で、ニュースを広めていくバンドだね。」

リバティーンズは2004年、クラッシュにもレイジにもならず、あっけなく解散した。しかし、数年後、ジョー・ストラマーの死後設立された、ストラマーヴィル基金のためのチャリティ・シングルで、カール・バラーはピート・ドハーティと一緒に、ベイビーシャンプルズ&フレンズという名義で"Jenny Jones"を歌った。僕はそれを、何度もターンテーブルにのせた。

■Tommy Gun



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