003 How About "Indie Label" ?

2007.08.26

イワホリ:と、いうことで、こんばんは。
アオキ:はい、こんばんは。ひと月ぶりのご無沙汰でございます。今月は「レーベル」ってものをテーマに一席ぶってみようと思いまして。
イワホリ:ほほう。メジャー/インディー、有名無名を挙げれば、それこそ星の数ほどあるレコード・レーベルですが、そもそもレーベル話をしようと思ったとっかかりは何よ?
アオキ:ま、今月もMUSICAへのアンサーソングみたいなもんなんですけど。9月号の特集が「日本のインディーズ」と銘打って、歴史を追って奥のバンドが羅列されてるんだけど、記事の中に「レーベル」って概念がほとんど出てこないのが気になってさ。ま、健さんが表紙だったからpizza of deathはもちろん出てくるのだけど、ことインディーズのバンドを語るには、レーベルってすごく大事なくくりじゃないかな、と思った訳ですよ。
イワホリ:ナゴムもカヴァーしてたじゃん(笑)。
アオキ:まあ、オーケンひっぱりだしてナゴムを出さない訳には(笑)。でも、そのふたつくらいでしょ?あれだけ「インディーズ」といっておきながら。
イワホリ:だね。
アオキ:ま、あと、自分がこないだwits(z) Nightっていう、レーベルのトリビュートイベントにゲストDJでお招きいただいて、あらためてそこの音源をまとめて聴いたってこともあって。第一期最後のリリースから10年以上経ってるのに、レーベル丸ごと好きだ!ってひとが集まるのよね。
イワホリ:ジャケ買いならぬ「レーベル買い」なるレコードの掘り方もあるくらいだしね。
アオキ:そうそう。自分がそうやってどんどん深みにハマっていったからさ。ここ最近、そういうのあんまりしなくなったなあ、と思いつつですね。
イワホリ:逆にしなくなった理由、てのも確かにあるはずなんだけどね。まぁそれは後で。

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イワホリ:今、Wits(z)っていう固有名詞が出たわけだけれど、スパイラル・ライフにL⇔R、そして初期嶺川貴子を擁したレーベルだよね?
アオキ:そそ。ミネコちゃんはトラットリアに、エルアールはポニーキャニオンにメーカー移籍、そしてスパイラルの解散がすぐにあって、その時期に実働していたのは3年にも満たないくらいじゃないかなあ。
イワホリ:短いながらも強烈な個性を放っていた、と。
アオキ:うん、その後も UITSとかいろいろ表記を変えたり戻したりして活動はあるにはあって、今はHARCOが一応在籍してるかたちなんだけど、当時のようなレーベルとしての空気はないのよね。ま、1アーティストしかいないから当たり前だけど。
イワホリ:プライベート・レーベルだ(笑)。
アオキ:根っこのスタッフはほとんど変わらないみたいなんだけどねー。特にレーベルとして強く打ち出すものがあるわけではないみたい。
イワホリ:他に、「レーベル」を意識して聴いていたのってある?
アオキ:あとはやっぱりUnder Flower Recordsじゃないかなあ。90年代の終わり頃には全幅の信頼を置いてレーベル買いしてたもの。
イワホリ:はいはい。今年は15周年ってことで再発や記念盤も出てたけど、あの4枚組コンピとか見ると、凄いもんね?
アオキ:うん、すごいのよ。
イワホリ:アジカンもビークルヒダカも名を連ねているっちゅう。
アオキ:さらにはゼペットストアからノーナ・リーヴスまでいますからね(笑)。コンピにははいってないけど、サニーデイの一番はじめのリリースはここからだし。あのコンピはアンフラ本体だけではなくて、少しジャンルの違うレーベルもそれぞれに収録されての4枚組なんだけど、UNDER FLOWERの品番10〜30番台のバンドって本当に公私ともに仲が良くて、音楽性もある程度近くて、レーベル買いはそれこそ「間違いない!」(死語)かんじだったのよね。
イワホリ:「日本のクリエイション」みたいな話を、NG3新井サンとかのインタビューでも読んだけど、圧倒的に異なるのは、「仲良さそう」ってとこだね(笑)。
アオキ:そそそ(笑)。今は当時ほどそうではないみたいだけどね。
イワホリ:まぁでも、下北沢周辺ギターポップ、ていうイメージに違わない活動を続けてるってことだよね。
アオキ:下北系ギターポップ/ロックブームの第一次爆発とあっという間の収束(涙)にも関わらず。ずっとスタンスのかわらないまま15年やってきてるのだなあ、とこないだ思いましたよ。

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アオキ:ホリ的には「これぞレーベル買い!」みたいにチェックしてたところってある?
イワホリ:日本でいえば、世代的にはもちろん「ピザ・オブ・デス」。と、いわゆるAIR JAM世代と言われるあたりは、ひとまとめに聴いてたかなー。CD買うとさ、ツアー予定の入ったチラシとか入ってたじゃん?
アオキ:ああ、うんうん。
イワホリ:あれで、対バンに名前載ってるバンドと、special Thanksに名前載ってるバンドは片っ端からチェックするっちゅう(笑)。
アオキ:あははははは!
イワホリ:キッズだったねえ、あの頃は。
アオキ:おんなじことアンフラ周辺でやってたわ(笑)。
イワホリ:あとは、メロコア繋がりでEpitaph Recordsとか(笑)。
アオキ:うわあ、ホントのキッズだなあ。
イワホリ:NOFXのFat Wreck Chordsとか。とにかく、コンピが安かったの!20曲入り990円とか。
アオキ:うっわ、安!
イワホリ:帯に「一曲辺りアンダー50円!」とか書いてあるんだぜ?(笑)
アオキ:ひっでえ!
イワホリ:深夜通販のゴールデンポップスBOXかっつう(笑)。あとは、ビースティーズ・ボーイズのグランド・ロイヤルとか。
アオキ:やっぱりさ、当時って今に比べて、いろんなジャンルでのレーベル活動がずいぶん活発だったのかなあ?
イワホリ:そうだねー。

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イワホリ:今俺が挙げた幾つかのレーベルには共通点があってね。それは、ミュージシャン自身が立ち上げて、運営を始めたっていう、ドゥ・イット・ユアセルフなところなのですよ。
アオキ:なるほどなー。
イワホリ:出すところが無いから自分達でやる、ていうところから始まって、それが話題を呼んで大手のレコード会社と契約を結んで、ていう。
アオキ:アーティスト主導のDIYなレーベルと、ひとりのオーガナイザーの目利きで作られるレーベルって、やっぱり少しカラーがかわるよね。ワタクシが挙げたのはどっちも後者だし。
イワホリ:そうだねー。あと、アラン・マッギーのクリエイションなんかもそのグループに入るかな。
アオキ:先日亡くなったトニー・ウィルソンのファクトリー・レコードなんかもまさにそうね。
イワホリ:イギリスって裏方のプロが多いのかな?マルコム・マクラーレンとかさ。
アオキ:「裏方のプロ」ってなんか不思議な言葉だけど、アーティスティックな部分以外で、きちんと表舞台に出てくる中心人物がいるのよね。
イワホリ:なんつうか、イエローキャブ野田社長的な(笑)。
アオキ:…まあそうだけど。
イワホリ:ニュアンス間違ってないでしょ?(笑)
アオキ:「そういう立場、憧れなんだよな」って言いそうになってたんだけどさ(笑)。
イワホリ:ははは!目指して下さいよ、野田ポジション。

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イワホリ:アーティスト主導にせよそうじゃないにせよ、インディ・レーベルにカラーが出るってのは、まぁ当たり前って言えば当たり前だと思うのよ。
アオキ:うん、それが出なくちゃ「レーベル」って看板を掲げる必要もないしね。
イワホリ:まさにそう。原語的には「レッテル」と同じなんだし。でね、今、90's当時に比べてレーベル買いをあまり意識しなくなったとアオキが感じる理由って何なんだろ?
アオキ:うーん、なんだろうねえ。
イワホリ:あら、自覚ないんか(笑)。俺は幾つかあるけどね。とりあえず、wikipediaのレコードレーベル見てみ?今現在の、日本のいわゆる大手レコード会社のレーベルってのを割とよくまとめてるんだけどさ。
アオキ:うわ、URCがエイベックス傘下に入ってる!
イワホリ:そう、そこ一番笑うところなんだけど、大雑把にいうとコウダクミとあがた森魚がレーベル・メイト、ていうさ(笑)。
アオキ:商業ベースのレーベルばっかりだねえ。吸収合併の嵐。
イワホリ:というか、これは世界的な現象なんだけれどさ、もう、本当の独立インディ・レーベルって難しいのよ、探すのが
ねー。
アオキ:かつては1つのメーカーだったレーベルがそのまま傘下に入ったりしてるしね。
イワホリ:そう。ワーナーのサイトとか見ても、ワーナーの名の下に、何十ものレーベルのロゴが連なるっちゅう。
アオキ:おや、rhinoまでこんなところに!
イワホリ:だから、グローバリゼーションというか企業買収の極みというか、業界再編の波がレーベルの個性を洗っちゃってるのねえ。広く聴かれようとするが為に、ミイラ取りがミイラに、みたいなところはある。勿論、インディでの実績が認められてメジャーと資本を提携するっていうのが本来だし、それが90年代のインディ→メジャー進出の本筋だったはずなんだけれど、ソニック・ユースとかニルヴァーナの成功があまりに巨大だったために、その後に続くものが飲み込まれちゃったってところはあると思う。
アオキ:「sony傘下のインディ・レーベル」なんて語義矛盾もはなはだしいけど、実際にそういうレーベルはたくさんあるしねー。
イワホリ:そう。そしてそういうところの方が、生き残りに関しちゃシビアなのかも。自分等の世代でも、ハイスタ以降、とかモンパチ以降、で今も活動しているアーティストって、ホント一握りだもんね。
アオキ:メジャーにいったばっかりに…。ってバンドは多いしね。1999年頃の下北沢もそんなはなしばっかりでした(涙を拭う)。
イワホリ:泣くな(笑)。ま、ザルがおっきくなれば穴も大きくなるって話だよね、今のは。

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イワホリ:それとは逆に、インディというか、音楽を発信する形がもっと細分化していったっていうのもあるよね。
アオキ:そうねえ。最近じゃあmyspaceのアカウントがないバンドのほうが少ないくらいに思えるし。
イワホリ:そう。ダイレクトにメジャー契約を果たしてしまうなんてのも、もうどんどん出てきているからね。個で発信する、個にアクセスすることが容易になったってことかな。
アオキ:バンドにもリスナーにとっても、音楽に増えるチャンスそのものは増えてるよねえ。
イワホリ:そういう時代だからこそ、逆に信用たるレーベル名とか、レコ屋の需要ってあるのかな、とも思うんだけれど。一方でそれもマニュアルっぽくてヤダなー、てのもあるんだけどね。
アオキ:そういえば、癖のあるレコード屋も減ってるんじゃない?専門性の高い、小さなレコ屋がさ。
イワホリ:ああ、みんなタワレコとかHMV大好きだもんね(笑)。
アオキ:それこそ渋谷系の総本山マキシマム・ジョイとか、鎌倉のカジノ・クラシックスとか。自分の趣味ストライクではないからこそ、緊張しながら勉強のつもりで通ってたお店だったのにね。
イワホリ:カジノ!
アオキ:在庫品の全部に暑苦しいPOPがあるようなお店は必要よ、やっぱり(笑)。
イワホリ:レコメンドも、個に向かってるところはあるよね、でも。「某渋谷系DJ激プレイ!」みたいのは、昔からレコ屋にはある売り文句だけどさ、雑誌とかHPで名前挙げてた、とか、そういう、ヤフオクで言うところの「キムタク着用」「HF愛用」みたいな、レコメンのブランド化がさ(笑)。
アオキ:あはははは!
イワホリ:実際自分もそういうところから情報得ることも多いんだけど、簡単にそういう情報を手に入れられて、そしてその音楽にアクセスできてしまう、てことで、偶然の出会い、みたいなものは減っているのかも。まぁ、もちろん受け手のアンテナの問題もあるんだけどさ。
アオキ:ものすごくアンテナの感度を意識しないと、道草も食えない感じにはなってるよね。「これを買った人には…」方式でずるずる引っ張られていっちゃう。
イワホリ:ま、敷居の低さは大事だけれどね(笑)。
アオキ:なんでも手に届きやすいからこそ、目印となるレーベルとかに出会えるといいなあ、とおもうなあ。さっき言ってた、大きな再編みたいな動きとは一線を画した、ちいさくてもしっかりやろうとしてるレーベルもぽつぽつあるじゃない?
イワホリ:例えば?
アオキ:そかべにーさんのrose recordsとか。
イワホリ:はいはい。あそこは理想的だよねー。City Country Cityっていう発信基地まであって。
アオキ:ひぐまくんのやってるbluebadge labelも「ディスイズギターポップ!!」て、もうずっと芯のぶれないセレクトをしてるなあ、と思うなあ。

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イワホリ:あとはさ、アオキが無償の愛を捧げるはずだったのにビーチにトライセラを見に行ってしまった(笑)the Enemyが、デビューするために、初期コステロなんかを出していたStiff Recordsを再興させたなんて話も、レーベルってもんにまだまだ意味合いがあるんだなー、て感じさせるに充分なエピソードだと思うけどねー。
アオキ:いや、えねみは全部見てからマリン→ビーチダッシュして行ったの!そしたらラズベリーに間に合わなかった、とい(笑)。
イワホリ:ああ、ちゃんと観たんだ(笑)。
アオキ:見たもん!「自分の親がカタログ全部持ってるレーベルからだしたい!」っていうのは、ホント純粋でかっこいいよなー。トライセラと言えば、bounceレーベルも今思えば目の効くところよね。トライセラ、グレイプバイン、スガシカオ、ゴスペラーズ、こっこちゃん、ってすごいわ。
イワホリ:まさにニューカマーを紹介!て感じだよね。最近だと、これはファッションともかなりリンクしてるとは思うんだけれど、KlaxonsやSMDなんかのニュー・レイヴブームを先行していったフランスのKitsuneとか、Justiceなんかを擁するEd Bangerなんかは、すっごく「トキワ荘」感があるっていうか、集まるべくして集まってるっていう雰囲気がいいなぁ、て思うけどねー。
アオキ:トキワ荘! "Kitsune"はホント、レコードレーベルでありアパレルブランドでありエディターでデザイナ集団であり…だもんね。
イワホリ:やっぱさ、そういう雰囲気が楽しみなのよね、レーベルって。大手感のしない、レーベルの良さってそこでしょ?感性の近い人が集まって、とか意気投合して、ていうのがやっぱ一番信用に足るじゃない。
アオキ:うんうん。
イワホリ:「ワーナーのレーベルメイト」って言われても、「トムとジェリー」?って感じだしさ(笑)。
アオキ:ぶははは!
イワホリ:勿論、アーティストの個性っていうのは大事なんだけれど、看板としてのレーベルの個性っていうのも、あった方が絶対楽しいし、選び甲斐があるよな、って感じですかね、ぼくら的には?
アオキ:うん、そいうことですねー。どんどんダイレクトに音楽が届けられる時代になってくるんだろうけど、どんな環境で、どんなつながりでその音が鳴らされてるのか、ってのも大事にしたい。一人で聴くもんじゃないからね、音楽って。
イワホリ:そうだねー。繋がってナンボだからね。僕らがこういうコラムを続けるのも、やっぱ誰かといい音楽をシェアして、もっと楽しみたい、てことに尽きるもんね。
アオキ:そそそ。ひとりよりふたり、ふたりよりもっと!…あー、なんかやたら開放的なシメに向かっていくのは、フェスシーズンのせいかしらね(笑)。
イワホリ:ははは!サマー・オブ・ラブってことで(笑)。…うわっ!なんからしくなく綺麗に着地した!(笑)
アオキ:うはははは!それは天気のせいさ♪
イワホリ:じゃ、また次回更新でお会いしましょう。
アオキ:おあいしましょー!


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