イワホリ
ちょっと飛ばしすぎたんで少し戻すけれど(笑)。そんな感じで、2000年前後っていうのは、いわゆるロックバンドが鳴らす音に、少しずつ変化が出始めてきたっていう話。
アオキ
オーケー。いい指摘だと思います。
イワホリ
歴史の話で、別の視点でいうと、2000年って言うのは、フジが苗場二年目を成功させて、サマソニの初年度が富士急でスタートして、WESSによるライジング2年目/今の原型が生まれ、そしてRIJが台風で飛ばされたっていう、現在のロック・フェス大手が出揃った年でもあります。
アオキ
ああ、そうか。
イワホリ
もう一つ忘れずに言っておくと、ハイ・スタンダードが現時点で最後のライブを行った、AIRJAMもこの年
*1
。だから、テクノとかハウス的要素をロックバンドが持ち出したのっていうのも、AIRJAMに代表されるラウド/パンク系な音へのカウンターっていう見方も、出来ると思う。
アオキ
下北界隈は相変わらずギターポップバンドが青田買いされては枯れていくってサイクルがあって(涙)、あんまり感じなかったけど、思えばラウドバンド絶頂期、だもんねー。実家に帰って地元の友達と話すたびに動揺してた気がする。みんなハーフパンツ(笑)。
イワホリ
そう。ここでカウンター、ていうのがまた一つキーワードになって来るんだけれど、一つの仮説として、ラウドな生音主体のパンク・サウンドなんかのカウンターとして、テクノやハウスの要素を取り入れたロック・バンドが現れてきたのかな、と。2000年前後の話。
アオキ
うん。
イワホリ
で、海外的にも、例えば99年頃のアメリカって言えば、リンプ・ビズキットみたいなラップ・メタルとか。要は、悪そうな奴はだいたい友達の音楽ね。
アオキ
はいはい、わかりやすい(笑)。
イワホリ
あと、エミネムみたいなヒップホップが主流。イギリスもブリット・ポップがすっかり落ち着いちゃって、そこで出て来たのがケミカルとかファットボーイ・スリムのビッグ・ビートなんだよね、ちょっと前のハナシになるけれど。
アオキ
おー。
イワホリ
あのアッシュですら、ライブにDJを入れていた頃ですよ。だから「ロックがダンスカルチャーに接近した」っていうよりは、ダンスミュージックの側がロックサウンドを一つの武器として取り込んだ、てのがダンス/ロック話の本来の話だよね。ケムズなんて、出すアルバム毎にシャラタンのティム/オアシスのノエル兄貴/プライマルのボビーと組んでるんだからさ。
アオキ
ああ、だよねえ。ダンス側からのアプローチを端緒にして、逆向きの動きも起こってきたってことか。
イワホリ
その通り。で、その成果が
Exterminator
/ Primal Scream。これが2000年の1月だから、邦楽でダンスの要素が云々、ていうのはほんのちょっとだけ時差があるんだよね。
アオキ
なるほどね。自分がプライマルを聞き出して初めての来日だったんで、このツアーは調子に乗って赤坂BlitzとCLUB CITTAの両方行ったのね(笑)。
イワホリ
すげ(笑)。
アオキ
どんなライヴやるのかなあ、とそわそわしっぱなしだったんだけど、セットの前半はわりとアルバム中心でさ。なんかこう、フロアが悶々としてるのがよくわかったの(笑)。
イワホリ
はいはい。
アオキ
「
Swastica Eyes!
」ってシャウトされて、かっこいいんだけど、どうふるまったらいいかよくわからない、みたいな。で、終盤の「こっから盛り上がっていくぜー!」てところ、
"Rocks"
のイントロでバカスカひとが飛んでさあ(笑) 。
イワホリ
わっかりやすいなー(笑)。
アオキ
人生初のダイヴ発射台になった夜でしたよ(笑)。
イワホリ
で、そういうイケイケドンドンのダンス・カルチャーとロックに一度ちょっと待ったをかけたのが"Kid A"ね。こっからまた、ポスト・ロックだとか、電子音楽でもダンス・ミュージックだけじゃない、エレクトロニカみたいな音楽が注目されだした。かたやダフトに代表されるハウス・ミュージックの復権も成されてきた。その波を受けて、くるりは
"ワールズエンド・スーパーノヴァ"
を出して、スーパーカーは
"Strobolights"
を出す。それが2002年。
アオキ
ああ、そう対応するのか。
イワホリ
シングルのStrobolightsと
"Highvision"
に入ってるヴァージョンって全然音違うじゃない?アレなんか、完全にエレクトロニカ以降の音作りだし。
アオキ
たしかに違うよねー。最近はむしろシングルの方がよく聞くかもしれない
*2
。DarlingでもCCCでも聴いたもん。
イワホリ
くるりも、アルバムでもろハウスってわけじゃなくて、もっと雑多な要素を取り入れてる。ただ、どちらもそれが100万枚売れたとか、シーンをひっくり返した、て程では残念ながらないんだよね。
(熱っぽくなってきました)
エキシビジョン名物、イワホリの脚注。余談多し。
*1 AirJAM
日本版ワープドとも言うべき、パンク・ロックの祭典AirJAMは、97年に初開催。翌98年に行われた豊洲は、奇しくも同年一年限り東京開催となったフジロックと同じ場所。翌99年は開催されなかったのですが、ハイスタは苗場のグリーン・ステージに出演。そして最後の開催となった2000年の会場は、翌年からサマソにのメイン会場となった千葉マリンスタジアム。
*2 Strobolight
これは、ベスト盤「
A
」と、映画「
ピンポン
」のサントラの、功績っつうか、功罪かな。
"HIGHVISION"
のヴァージョンの方が、シンセの音が耳に優しく、リスニング向きなのは断然こっち。 あと、我々exhivisionの名前も、このアルバムからヒラメキインスピレーションを受けてます。
000 : ロックで踊りたい?
2008-07-01
001 : ロック2000年問題(1)
2008-07-02
002 : ロック2000年問題(2)
2008-07-03
003 : 8の字描くように
2008-07-04
004 : ClashをCheck It Out!
2008-07-05
005 : I Don't Wanna Be With You
2008-07-06
006 : 楽隊のメロディー。
2008-07-07
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