イワホリ こんばんは。今日は久々に長くなりそうな感じですが、ビールかコーヒーの準備はいい?
アオキ わたくしショコラブルワリーを頂いておりますが、これ、うっかりして甘い。
イワホリ 大人じゃないような?(笑)
アオキ こどもじゃないような…。
イワホリ ははは。といったところで始めますか。本日のお題はずばり「ひふみよ 小沢健二コンサートツアー」。まず訊きたいんだけれどさ、このツアーの第一報を聞いたとき、どんな感じだった?
アオキ 正直、ちょっと微妙な気分になった。昨今の再結成ブームにやや辟易してたところもあったし、わたしにとって小沢くんて、物心ついたらもういないような存在だったから、今更なあ、という気分も会ったし。お互い結構毒はいてたような気さえしますけど(笑)。本ツアーのチケット、申し込んでさえいないし。じつは。
イワホリ はは!俺も自分は外したからねー。俺は最初、悪寒がした。
アオキ 悪寒?
イワホリ 最初、ナタリーかな?速報が流れた瞬間の、世間の熱狂的な盛り上がりが、なんか怖かったの。サニーデイともユニコーンとも違った感じじゃない?
アオキ たしかに。どこを「世間」と呼ぶかにもよるけども。
イワホリ なんか、「ずっとこの時を待ってた!」的なリアクションが多くなかった?とか、「お帰りなさい!」とかさ。
アオキ ああ、そうだね。「あれ、あなた小沢くんすきなの?」みたいな人も、そういう言い方をしてた気がする。同世代よりちょっと上の人たち。
イワホリ 「本当に時間は止まってたの?」っていう感じがしたのと、あとはやっぱさ、「うさぎ」をこの5年弱律儀に読み続けて来た身としてはね。ここ数年彼に抱いて来た印象と、90年代の音楽をやります、っていうコンサートの印象とが、どうしても混ざらなかった。
アオキ ふむ。わたくしが最初、いまいち乗り気にならなかったのは「彼はもうああいう顔で、ああいう音を鳴らさないんだろうなあ」と思ったからなのよね。もちろん生で見たことはないから、当時のテレビとかVILLAGEツアーの武道館映像見てのイメージなんだけど。
イワホリ うん。それは、青木さんが亡くなって、暫くしてeclecticを聴いた時に思った。
アオキ 「彼はもう無邪気な王子じゃない」って。まあ、実際には全然そうじゃなかったんだけど。
イワホリ でさ、それでも観に行こうって思ったのって何故?
アオキ ツアーが始まって、行った人がみんな声にならない感嘆のため息をついてるのを見てからかなあ。誰も内容に触れようとしない、けどものすごく満ち足りて帰ってきてるなあと。追加公演も申し込んでなかったのよね、実は。
イワホリ あ、そんな後か。俺が行こうと思ったのはさ、単純。「それでも好きなんだよぉおおお!」
アオキ ぶははははは(笑)。あなたらしい。
イワホリ てへ。
アオキ てへ、てアンタ。
イワホリ だって、小沢だよ?ドゥーワチャライクの人だよ?
アオキ 森永ダースの人ですよ。
イワホリ JR東日本の人だよ!
アオキ 赤いダッフルコートのひとだよ!
イワホリ 小沢征爾の甥っ子で、学生の時に読んで衝撃を受けた小沢牧子さんのご子息なんだよ!。。。とかさ、バイオグラフィまで語れる程熱心に思った人なんていないのよ、そんなにさ。
アオキ そうねえ。やっぱり90年代中盤に出会ったひとは、ちょっと特別な想いでもって記憶されてる存在だよね。
イワホリ もうそれは仕方ないよね。でも、ノスタルジーに浸りたいなんて気持ちは欠片も無かったって、誓って言える。夢中で音楽を聴いていたときと全くボイスもベクトルも違うと分かっていながらも、それでも彼の言葉を注意深く追っていたしさ。ご存知だとは思うけれど、俺がDJする時ってさ、凄く、大事な時に、オザケンかけてるじゃない?
アオキ そうね。あんまかんたんにかけないよね。
イワホリ 自分が小沢くんの曲をかけるときの瞬間って、どれも凄く印象に残ってるんだよね。だから「遠くなってしまった」という感覚がありつつも、それでもずっとそばにある音楽と言葉を与えてくれたことは否定のしようがないというか、出来なかった。
アオキ そうだね。自分がどっぷりとノスタルジーに浸りに行ってしまうのが怖いとか、それ以前に、彼自体がそうなってるの見たくないな、とかいろいろ思ってたんだけど。「チケット譲ります」ってひとことを見て「なにアホなこと言ってんだ自分、さっさと見に行きやがれ」って目が覚めたのよね(笑)。誰かがちょっと遠くに出かける時に「あふれる幸せを祈るよ!」とか言っちゃうくらい、彼の音や言葉がカラダに染みついてるんだもん、しょうがないなと思ってさ。
イワホリ ま、そんなもんだよね(笑)。というわけで、ライブの感想に入りたいと思いますが。
アオキ はい。
イワホリ まぁ、俺は終始座って見ていたわけですが。
アオキ あれ、わたくし客殿が落ちた瞬間に、三階から転げ落ちそうになってましたけど!どうしたのよ(笑) 。
イワホリ タイミングを逸したんだよ!
アオキ ぶははははは!
イワホリ つうかさ、ほら、最初真っ暗だったじゃない?で、第一音と共に、みんな、当然わー!って総立ちじゃないすか。ホールの椅子ってさ、立つと閉じるじゃない、座面が。で、正座の姿勢で、足を挟むと、パタパタ遊べるじゃん?
アオキ はあ。
イワホリ 始まる前、真っ暗だし誰も気にしねえよな、と思って遊んでたら、突然音鳴りだしてさ。…つま先が抜けない!…と。
アオキ あはははははははははっはははっは!
イワホリ だーってさ、普通ホールで見るなんて、吹奏楽とかバレエの発表会とか演劇とかしかないじゃん?で、ちっちゃい時にそういう場所でそんな遊んでたら、つまみ出されるじゃん。だからロックコンサートって楽だなー、と思って、そっから開き直ってずっとソファで膝立ちしたりしながら見てたの。で、後ろ向いたりずっとフラフラ見てたから、凄く変な客だったと思う。
アオキ そんなひとが隣にいなくてよかった…。気が散ってしゃあないわ!
イワホリ ホンッとすいませんでしたって感じだけれどね、主に15歳の俺に(笑)。しかもそんなんで見てたから、明るくなってからも、ステージあんまよく見えなくてさ。
アオキ ああ、そうか、こっちは追加公演だったから、まあ勝手知ったる人も多くいたのだろうな。客電落ちたらみんなすぐ立ってた。
イワホリ 2曲目は『僕らが旅に出る理由』だった?
アオキ うん。セットはたぶん全公演おなじなんじゃないかな?
イワホリ あの曲の途中で、明るくなったでしょ?
アオキ 「遠くまで旅する♪」でまっしろになった!
イワホリ そう、何故か脳内で紙テープランチャーが補完されるんだよね、あの瞬間(笑)
アオキ 銀テープランチャーでも可。「とおくまで(っぱああん!)」て感じ。
イワホリ それそれ(笑)。で、辛うじてマイクスタンドが見えてさ、「うわー、本当に小沢くんが歌ってるよー、ハンドクラップとかしてるよー」と思って、満足して暫く目閉じて聴いてたのね。で、次の天使達のシーンでさ、ようやく落ち着いてあらよっと立ってステージ見たらさ。…真城さんと間違えてた。
アオキ …いやないわ、それはない!
イワホリ なんで「パナウエーブみたいの着てるの?」とか素で思って動揺したんだよ俺は!いや、うっかり誰かのツイートで「真城さんがすっきりしてた」みたいのを目にしてたの!それにほら、俺裸眼視力悪いからさ。。。いやー、我ながらあれは驚いた。
アオキ そんなひとが隣にいなくてよかった…。
イワホリ そーいうアオキだってさー、合唱する時は常に真城コーラスだったでしょ?
アオキ そう、そうなの!完全にメイン歌メロのとれないカラダになっておる。
イワホリ 俺も。だから、むしろ女子が必死にメイン歌ってるのが周りにー多くてびっくりした。
アオキ 音域的に真城パートの方が気持ちよく歌えるよねー、当たり前だけど。でも、思えば初めて「小沢くんにコーラスしてる真城さん」の生声を聞いたんだ。ヒックスヴィルだの堂島くんだの、果ては山田さんが小沢くんを歌う時にコーラスしてるのさえ見てるのに。すごく不思議な気分になった。
イワホリ そこはね。当たり前のようだけれど、やっぱ凄いよねー。逆にスカパラさん達の相変わらずっぷりには安心したけどね(笑)。あ、2010年だ、みたいなさ。俺、多分2000年代に一番ライブ見てるのってスカパラなんだけれど、やっぱり冷牟田さんが抜けてからのスカパラって、凄くせわしないというか、9人で10人以上のことをしようという気負いみたいな印象があって。
アオキ あれ、冷牟田さん抜けてからそんなに見てるんだっけ?
イワホリ 見てるよ! まあそれは本人達が意図していなくとも、見る側の思い入れとかが多分にあるんだけれど。だから、いち楽器演奏者として自分のパートに専念しているGAMOさんとか見れてよかったなって思った。
(後編に続くよ!)



(c) 2007-2010 exhivision all rights revered .