イワホリ さて、改めて聴いてみて、どう?
アオキ すごく2010年の音になってるなあ、と素直に思った。今まで聴いたリマスターものって、明らかに古い作品だったり、オリジナルの時点で物足りない思いを感じてるものが多かったんだけど、これまでこの作品に関してそういう風に思ったことなかったので。当初は「そんなに変わんないんじゃん?」て思ってた。
イワホリ 俺は、「Point」が出た時に「コーネリアス変わったなー」って思ったんだけれど、これ聴くと「Fantasma」がしっかりベースにあるんだなー、と思った。
アオキ ああ、それはすごくよくわかる!
イワホリ 音のコラージュは凄くこってりとしてるんだけれど、でもはっきり聴こえるようになってるっていうか。
アオキ 音の隙間がきちんとある感じがするの。それを「音に広がりがある」って表現するとちょっと違って、広さはあるけどちゃんと一定の広さに留まってるかんじがすごく心地よい。
イワホリ そのあたりはまりんだなー、て感じだよね。
アオキ うんうん。
イワホリ サンレコかな?インタビューで、「point」はまだリマスターする必要性を感じない、的な事を言ってたのもあぁそうかー、て思った。
アオキ へええ。
イワホリ だから、龍安寺の石庭作った人がワット・ポーの中庭を掃除するような感じ?
アオキ ぶはははは、それわかんねえよ!(笑)
イワホリ あれ?
イワホリ あとさ、あと、コーネリアスのライブって、映像とのシンクロが欠かせないじゃない。それも、このアルバムのツアーからなんだよね。広川太一郎、じゃなくて、、、ええと、誰だっけ(笑)。
アオキ つ・じ・か・わ!辻川幸一郎氏ですな。
イワホリ そうそう!失礼しました。ライナー読むと、当時はVHSだったとか書いてあるじゃない?
アオキ

手元にありますROJ1998/1月号では、ちょうどワールドツアーを終えたハワイでのインタビューが展開されておりますが、せっかくだから映像に関するくだりを引用してみましょうか。

「まずTSUTAYAに行っていろんなビデオ借りて(笑)、10日くらいかけて映像全部作って。CGとか使わずにVのデッキ二台で音にシンクロさせて細かく細かくはめ込んでいくやつで」

「ほんとサンプリングでヒップホップのバック・トラック作るのとおんなじって言うか。ベースになる映像が逢って、こうフィルみたいな感じでアクセントになる映像が来て、みたいのって全然一緒だもんね」

…これVHSでがちゃがちゃやってんのかと思うと眩暈がするよね。

ROJ
アオキ しっかし並べるとすごいインパクトね、これ…。
イワホリ さすが! で、機材的な制約もあった当時でも、現在やっていることの方向性は97年からあったんだよね。それを音の方からまず今の水準に合わせましょう、ていうのが今回のリマスターなのかもね。
アオキ そうねえ。実際にライヴとしては「Fantasma」に収録されてる楽曲たちも、映像付きでしっかり再構成されてるもんね。
イワホリ 海外のアーティストでさ、「過去の名盤アルバムを全曲再現ライブ *1」ってここ数年流行りじゃん?あれを「ファンタズマ」でやったら、凄いことになると思うんだよね!
アオキ あああ、見てええええええ!
イワホリ 勿論ライブはまた別もんだろうけれどさ、でも、凄い事になるよね、きっと。
アオキ Mic Checkの「しゅぼっ」で号泣間違いなし!(うそ) *2
イワホリ

まあ付属のDVD見ても、「あぁ、ボーイスカウトシャツとか真似して着たな…」とかが先行するんだけどさ(笑)。

アオキ うわあ(赤面)。
イワホリ アーニーボールのレインボウのギターストラップ、使ってな。…うわぁ今思い出すと恥ずかしすぎる!俺小山田っ子じゃん!
アオキ 今ごろ気がついたように言うな!
イワホリ いや、ホント今気付いた。俺ずっと小沢チルドレンだと思ってたもん。三宅雪子か俺かっていう。
アオキ それ違う小沢!しかし、まあ、ねえ。まあその頃わたくしは、古着屋に行くたびに赤いダッフルコートを血眼になって探してました、と告白しますが。
イワホリ あれだ、「ジョン派でもポール派でもない、ビートルズ派だ」みたいな(笑)。
アオキ とかいって全然パーフリ派っぽくは見えないよね、あなた(笑)。
イワホリ だって沼津にアニエスbもエイプも売ってなかったもん!(泣)。
アオキ まあ、学ラン脱いだらボーダーにベレー帽って17才もどうかと思いますけどね…。
イワホリ ああ、どうしても思い出に引っ張られるな。まぁそういう世代だししゃあないか。
アオキ 言うなれば呪いですよ、あの時代はもう(笑)。そうそう、今回のブックレット、すごくいいよねえ。ブックレットじゃないか、ライナー。
イワホリ うん、当時のレビューやインタビューと、回想のコラージュなんだけれど、あのごっちゃ煮感がまさにファンタズマだよね。
アオキ 可読性なんてそっちのけの情報量とか、極端な活字のジャンプ率とかね。当時見知ったエピソードがあったり、初めて聞くような話があったり、意外なひとが載ってたり、すごく読みごたえがあった。
イワホリ 決して一面的な評価、見方ができないアルバムだってことだよね。リマスタリング自体も、まりんらしい、とは言ったけれど、決して原曲の印象をドラスティックに変えるものではないし。あくまで元々持っている多様性を引き出した仕上がり。
アオキ そうねえ。旧盤リマスターみたいに「劇的に音質が変わった!」てもんでもないし。まあ、2010年にこれを出しちゃうあたり、確信犯にもほどがあるぜ、って思っちゃうけど。
イワホリ なんか全部ぶっ壊れたわけだからね(笑)。
アオキ 「耳をすましてごらん」とか13年前の声で言われても(笑)。
イワホリ まあさ、「リマスター」と「リミックス」は全く別の行為ではあるんだけれど、時代と環境に合わせた音作りと、オリジナルへの敬意ってのは大事だなぁと思う。
アオキ 「エヴァーグリーンな名曲」とはいうけど、やっぱり音環境の変化ってあるよねえ。さっきあなた「イヤホンで音楽聴く習慣がなかった」なんてさらっと言ったけども。
イワホリ コーネリアスにしても、今後はこれがスタンダードになるんだろうし。たまにさ、"There She Goes"のマイク・ヘッジズverをかけるとさ、何これ?て顔されるじゃない?(笑) *3
アオキ あれはさあ、悪いけどわたくし認めないよ?(笑)
イワホリ (笑)。まぁ、リマスターと今挙げたような別verとかを一緒くたにはできないんだけれど、音質の向上だとか細かいところはマニアに任せておいて、聴いた事の無い世代に「新譜」として名盤に再度スポットを当てるのが、リマスターの意義という気はするかな。
アオキ 確かに。2010年にもなってレジの脇に赤盤と青盤が置かれてる、ってちょっと「おや?」って気になるもんな。そういう意味でも、このライナーってほんとうによい出来だと思う。単に旧世代が懐古するためのものじゃなくて、きちんと基礎的な情報をまとめてあるわけだし。 それでいて、こうやって旧世代がのうのうと昔話できる機会にもなるっていう。
イワホリ 旧世代(笑)。
アオキ タワレコの初回特典を見て、その情の深さに打ち震えるのは旧世代だけですよ? *4
イワホリ ははは!ガキにはわかんねぇんだよ!(笑)
アオキ とか言いながら、うちのイヤホン行方知れずなんだよね…。何処行ったんだろう(落胆)。
(イヤホンの大捜索にかかるのでこれにて終了!)
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エキシビジョン名物、イワホリの脚注。余談多し。

*1 過去の名盤アルバムを全曲再現ライブ
確かこれを認識したのは06年サマソニでメタリカが「メタル・ジャスティス」を頭から全曲やるっていうのを聞いた(観てはいない)のが個人的にははじめなんですが、名だたる大物が最近ではトライしているそうです。古いファンも盛り上がるし。Primal Screamの「Screamadelica」とか、Weezer「Pinkerton」とか、ずるいよねー。--- 忘れちゃいけない、ASH「1977」とか、CHAGE&ASKA「熱風」とか!(aok)

*2 号泣間違いなし
アオキは小沢健二「ひふみよ」ツアー、客電がおちた開演から約20秒後の「流星ビバップ」歌い出しでほろりと涙をこぼしたのでした。

*3"There She Goes"
ええと、お風呂のお湯を入れている人は長いので一度止めてからまたお越し下さい。ご公務の方も。。。ええと、準備はいいですか?The Beatles以来最も偉大なリヴァプール・バンド、The La'sの代表曲。現在までもっとも聴かれているヴァージョンは、Steve Lillywhiteのプロデュースによるアルバム・ヴァージョン。しかしこれは、仕上がりに納得がいかずレコーディングを続けたバンドに無断でレーベルが勝手にリリースし、フロントマンのリーは激怒、「買うな」と公言したという曰く付きのもの。でありながらも、ギターポップアンセムとして聴かれ続けてきたわけです。時は過ぎて2008年、その曰く付きアルバムのデラックス・エディションとして、Cure等を手がけたMike Hedgesによってプロデュースされたヴァージョン、Stone Rosesの1stであまりに有名なJohn Leckieによるヴァージョンと、様々なヴァージョン違いが存在し、オリジナル(リー的には違)を聴きすぎた世代にはちょっとした「これ誰がカヴァーしてるの?」なざわざわ感がフロアに生まれる、、、という話。でも、そのどのヴァージョンもリーが公式に認めて世に出したという記録はなく、一体本当の there she goesは何処に?というポップ・ミュージック界のフェルマーの定理なわけです。ご清聴ありがとうございました。--- 2005年のグラストでは、こんなざくざくしたアレンジになってるしね。さながら観測することによって状態が決定されるシュレディンガーな1曲。(aok)

*4 タワレコ&HMVの初回特典
オリジナルの初回盤には、「耳をすましてごらん」の歌詞のとおり、真っ白なイヤホンにオレンジ色のイヤーパッドがセットで封入されていたのです が、勿体無いから(&言うてもオマケ音質だし)で使わない人が多かったとかなんとか。一方のここぞとばかりにへビロテしまくって壊してしまった人はともかく、保存派の人も何故か久々にケースを開いたら中に入ってない、、、という、ポップ・ミュージック界と千尋(ex.penicillin)の神隠し。閑話休題。で、今回のリマスターにも当然収録されるかと思いきや、お手持ちのiPodイヤフォンにつければほらそれっぽい!といった感じで、イヤー パッドのみ復刻、特典として付けられたのでした。パーフリリマスターの時のパステルズ・バッジといい、さすが当時「渋谷系」を牽引した存在、気が利いています。



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