Sweet Ten Songs From "Darling".
001 -- Iwaholi

1980年10月生まれ。ジョン・レノンがこの世を去った日、小児肺炎で入院していたことから、「三途の川を渡る所をジョンが順番替わってくれた」と母親に言われ音楽への愛情を抱く。2006年初春、三軒茶屋Chromeにてオールジャンル・パーティ"SpinASS"をスタート。自身の選曲のモットーは、ピート・タウンゼントの言葉である"young, beautiful, stupid"。 → www.spinass.com


ダーリンズの皆様、いかがお過ごしですか?
こちら沼津は嵐も穏やかになった午前3時。あと一度陽がまたのぼり繰り返すと、最愛の姉の結婚式です。俺より先に寝てもいいし、俺より後に起きてもいいから、幸せになれよ、て感じです。意外とシスコンな自分に驚いてます。

さて、僭越ながら、岩堀心の10曲、解説編です。

※この文は9月吉日、イワホリ最愛の実姉の結婚式前夜、
文字通り枕を濡らしながら書かれたものです。お姉様、末永くお幸せに!

■ Rock Around The Clock / Bill Hairy And His Comets

映画「暴力教室」のテーマソングにこの曲が採り上げられたことで、ジャンプ・ブルースやR&Bの新種、ロックンロールが世界中を席巻した、なんて歴史的意義は全く知らなかった。後に甲本ヒロトも歌った、14才という特別な季節に聴き始めた「赤坂泰彦のミリオン・ナイツ」。友達が勧めてくれたまりちゃんズよりMen's 5より、自分の心を奪ったのは、この曲だった。

■ The Last Time / the Rolling Stones

あのベロのアイコンに象徴される、ロックンロール伝統芸能としてのストーンズには興味は無くて、自分が大好きなのは、ビートルズと競い合うようにR&Bやロックンロールのカヴァーを連発しながら、オリジナルを生み出そうとしていた60年代のストーンズ。

この曲は、現在彼等の、そしてロックンロールの代名詞的な存在となっている"Satisfaction"の直前にシングルカットされた、ジャガー/リチャーズ名義初のA面シングル。ブライアン・ジョーンズによるリード・ギターのフレーズは、後に彼等のマネージャーによって壮大なオーケストラ・アレンジを施され、さらにそのメロディは30年の歳月を経て、"Bitter Sweet Symphony"という名曲に生まれ変わった。

 

■ Help! / The Beatles

そんなストーンズと並ぶ、第一次・ロックンロール・リヴァイヴァルの先鋭だったビートルズが、無邪気なロックンローラーとして生きることを放棄することを宣言した、一つの時代の終わりを告げる一曲。

まさに「4人はアイドル」を地で行き、転がる石の如く駆け回った末辿り着いたアメリカでジョン・レノンが出会ったのが、ボブ・ディラン。彼の影響を受けた、直接的に己の内面の心情を歌う以後のジョンのスタイルと、20世紀最高のソングライターコンビである、レノン/マッカートニーのメロディが奇跡的なバランスで並び立つ、魔法としか言い様のない2分20秒。

 

■ I Fought The Law / the Clash

この曲の何が好きかって、ジョー・ストラマーのペンによる曲ではない、カヴァー曲だという点。「法と闘ったけれど、法が勝った」いかにもジョーが書きそうな歌詞なのに。

オリジナルは1959年、バディ・ホリーのバックバンドでもあったクリケッツによって演奏された、シンプルなロックン・ロール・ナンバー。つまりその頃から、ロックンロールは恋やキスやセクシーだけでなく、社会への怒りや不満をぶちまける、レベル・ソングとしての役割を果たしていたってこと。

宮本浩次の言葉を借りれば、キリストの聖書にも書いてあるってことはそれ、BC時代から変わらないってこと。決して変わらないからこそ、今もなお説得力を持って、我々の耳に響く。



■ Tomorrow / Me First & My Gimme Gimmes

NOFXのファット・マイクを中心に、第一線で活躍するバンドのメンバが集まったオールスター・宴会芸カヴァー・バンドが、彼等ギミギミズ。副業でロックフェスのヘッドライナーまで務めてしまうのだから、その演奏力・エンターティナー性は説明不要。

前に説明したクラッシュの"I fought the law"同様、彼等の演奏を聴いていると、シンガー・ソング・ライターという現代のバンドの大半のスタイルは、必ずしも必然的な型ではないのかも、という気持ちになる。音楽は決して歌い手も弾き手も、そして聴き手も選ばない。

 

■ 海へと / Puffy

そういった視点で考えると、アイドルとは、基本的に自分達の声を持たない。太田裕美には松本隆/筒美京平が。おニャン子クラブに秋元康/後藤次利が、モーニング娘。につんくが。そしてPuffyには、奥田民生という強力なソング・ライティングチームがいた。編成や自分の声や、時にはジェンダーという鎖からも解き放たれることで、曲作り自体にも自由度は生まれるのだと思う。

翻ってこの曲が歌うのは、三好達治もかつて詩にしたためた、海のように深く広い母性=女性への愛情。号泣必至の歌詞を、ルースターズ調のブギーに乗せて、気だるくPuffyに歌わせるのもまた、ポップ・ソングの面白さ。

 

■ You Can't Hurry Love / Diana Ross & the Supremes

このベース・ラインはまさに世界遺産。この曲の子孫はもう5親等くらいになるんじゃないかって位、印象的なフレーズ。そんなビートの産みの親であるジェームス・ジェマーソン=ファンク・ブラザーズの伝説と功績は、映画に成る程。し、か、し!モータウンの功績は、彼等だけのものではないという、言わば失われた神話も存在する。お時間のある人は、こちらのサイトに是非目を通してみて欲しい。


ただ勿論、こうした「そのとき歴史は動いた」的ストーリィを知っても知らなくても、スピーカーから流れるサウンドはいつだってご機嫌で、ダイアナの歌声が本当にキュート。それは常に真実。

 

■ Be my baby / the Ronettes

もしも恋する相手に、3つの単語しか言えないとしたら。。。出て来る言葉はこれでしょう。この曲の冒頭のドラムも、後にどれだけ引用されたか分からない程、印象的。

まず一発、そして少し遅れて二発踏みならされるキックは、恋に落ちる寸前の、落ち着かない胸のときめきを。そして直後高らかにならされるスネアは、押さえきれない恋心が溢れ出る瞬間を高らかに鳴らす。

 

■ Don't Look Back In Anger / Oasis

この曲を語るとそれだけで2万字は軽く超えるので、一つだけ。この曲で一番好きなラインは、二番のヴァースで歌われる、"ロックンロールバンドなんかに、君の人生を委ねちゃいけないぜ、きっと投げ出しちまうから"ってとこ。

思えば1stアルバムから、彼等は非常に醒めた目線を持っていた。君と俺は永遠に生きるんだー絶対に/たぶん。オアシスは確かに、「みんなのうた」になった。けれど、ノエルもリアムも、僕らを救ってはくれない。けれど、今日も世界のどこかで誰かがこう歌っているはず。アイ・ニード・トゥ・ビー・マイセルフ。

 

■ Stand By Me / Ben. E. King

尊敬する先輩が「世界で一番好きな映画」として進めてくれた同タイトルのエンディングを見て、そして、ジョン・レノンが自身のルーツ、お気に入りの曲を歌ったカヴァー・アルバム、その名も「ロックンロール」でこの曲をカヴァーしているのを聴いて、世界一スウィートな曲はこれだって確信した。

ギター初めて3ヶ月でも弾けるはずの、簡単なコード進行に、シンプルな歌詞。きっと、恋人に死ぬ前に3つの言葉しか伝えられないとしたら、出て来る言葉は、これでしょう。


そしてこのパーティに集まる全ての人達へ。

12/6, Softで会いましょう。
So Darling, Darling Stand By Me!!



 

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